「外陰部にしこりが!! これって何かの性病なの?」
どの場所だとしても「しこり」が見つかるのはショックなことですが、デリケートゾーンに「しこり」見つ買った場合、少々注意が必要です。
もしかしたら、そのデリケートゾーンのしこりは、「バルトリン腺嚢胞」かもしれません。あまり知られていない病気ですが、若い女性に多く見られる病気です。
「バルトリン腺って何?」「治療は必要?」そんな疑問にお答えすべく、バルトリン腺嚢胞の特徴や治療法について、わかりやすく解説していきます。
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外陰部のしこり「バルトリン腺嚢胞」の特徴とは?
外陰部のしこりが見つかった場合、バルトリン腺に問題がある可能性が高く、外陰部のしこりの原因として最も多いのは「バルトリン腺嚢胞」といわれています。
バルトリン腺って何?
バルトリン腺という名前は知っていても、どのような臓器で、どのような病気があるのか知らない方も多いのではないでしょうか。まず、バルトリン腺について説明したいと思います。
バルトリン腺は、膣口(膣の入り口)の斜め後ろ左右にある豆粒ほどの小さな分泌線です。膣口の膣口から見たときに、時計の5時と7時の位置にあります。
しかし、バルトリン腺は皮下にあって表面から触れることができず、開口部(穴)も小さいので、通常どこにあるのかわかりにくいです。
バルトリン腺は、「バルトリン腺液」という粘液を分泌して外陰部を潤し、性行為を円滑に行う役割を担っています。バルトリン腺液は、性的に興奮したときに分泌されます。
バルトリン腺嚢胞とは?
バルトリン腺嚢胞とは、バルトリン腺にできる嚢胞のことです。嚢胞は、体内に形成される良性の袋です。
バルトリン腺の出口がふさがり、外に排泄されない液体がたまることで嚢胞が形成されます。中の液体は無色透明の粘液です。
嚢胞は体の左右どちらにも発生します。嚢胞の中に液体がたまると、水風船のように膨らみ、小陰唇の内側が片方だけパンパンに腫れてきます。
もう片方のバルトリン腺はまだバルトリン腺液を分泌できるので、嚢胞の機能には問題はありません。
バルトリン腺嚢胞の原因とは?
バルトリン腺は開口部が非常に小さいため、どうしても閉塞が起こります。バルトリン腺嚢胞は女性の2%に発生すると言われています。
しかし、バルトリン腺が詰まる原因は、はっきりとはわかっていません。ただ、バルトリン腺嚢胞は20代の女性に起こりやすく、加齢とともに起こりにくくなると言われています。
まれに性感染症が原因となることもあると言われていますが、バルトリン腺嚢胞自体は性感染症ではないので、細菌感染などの炎症がない限り、パートナーに悪影響を及ぼすことはありません。
バルトリン腺嚢胞の症状
バルトリン腺嚢胞自体は悪さをせず、痛みも伴いません。目立たない器官なので、嚢胞が小さければ無症状で、患者さんも気づかないことが大半です。しかし大きくなると嚢胞が邪魔になり始め、陰部に違和感を覚えるようになります。
バルトリン腺嚢胞の症状
- 左右の小陰唇の形が非対称になる
- 膣口を触ると、片側だけにしこりがあることに気づく
- 歩行時の不快感や痛み
- 性交時の不快感
バルトリン腺嚢胞を治療せずに放置すると、ピンポン玉ほどの大きさにまで成長し、腫れあがることがあります。ここまで大きくなると、常に違和感があり、生活に支障をきたすこともあります。
外陰部のしこりに気づいたら、すぐに対処してください。
しこりを発見! バルトリン腺嚢胞はすぐに診察すべき?
デリケートゾーンのしこりは良性のバルトリン腺嚢胞であることが多く、がんなどの悪性の病気が見つかることは稀です。また、バルトリン腺嚢胞自体は命にかかわるものではありません。
多くの場合、治療は急がれませんが、治療せずに不快な症状を我慢するよりは治療した方が楽ですので、気になる方はすぐに婦人科を受診してください。
すぐに受診したほうがよい場合
- 嚢胞が大きく、動くと圧痛がある場合
- 何もしなくても痛みがある
- 我慢できないほどの強い痛みがある
- 嚢胞がデコボコしている、または複数のしこりがある(他の病気の可能性もある)
- デリケートゾーンのしこりの形成に伴い、発熱がある
- 症状の有無にかかわらず、40歳以上の方
急いで受診する必要がない場合
- 40歳未満で、しこりはあるが痛みや不快感、発熱がない場合
バルトリン腺嚢胞そのものは、自然に治りやすいものです。バルトリン腺の開口部がふさがれているだけなので、ふさがった部分を取り除けば自然に治るため、無症状であれば急いで受診する必要はありません。
しかし、痛みや発熱がある場合は、細菌感染による「バルトリン腺膿瘍」を発症し、治療が必要になることがあるため、産婦人科の受診が必要です。
また、40代以上の女性は年齢的にがんのリスクが高いため、外陰部にしこりを見つけた場合は受診して生検を受けることが推奨されています。生検とは、患部から組織を採取して、がん細胞があるかどうかを調べる検査です。
これは、40代以上の女性のしこりが外陰がんである可能性が高いということではありません。念のため検査を受けておくと安心ということです。外陰癌の発症リスクは10万人に0.5人とかなり低いです。
バルトリン腺嚢胞の治療方法とは?
バルトリン腺嚢胞は、医師が患部の外観を見るだけで、すぐに診断することができます。嚢胞が小さく無症状であれば治療の必要はなく、医師から「痛くなったらまた来てください」と言われ、帰ることになります。
嚢胞が大きく、違和感がある場合は、治療の適応となります。バルトリン腺嚢胞には、次のような治療法があります。
- 腺穿刺吸引
- バルトリン腺開窓術
- カテーテル留置術
- バルトリン腺嚢胞摘出術
穿刺吸引によるバルトリン腺嚢胞の治療法
穿刺吸引術は、局所麻酔をした後にバルトリン腺嚢胞に針を刺し、嚢胞内に溜まった分泌物を吸引する治療法です。術後は感染予防のために抗生物質が投与されます。
短時間の処置なので、そのまま帰宅して穿刺吸引を行うことも可能です。麻酔や処置で多少の痛みはありますが、体への負担は軽く、入院の必要はありません。
嚢胞が小さくなるため違和感や痛みはすぐに消えますが、再びバルトリン腺の開口部がふさがり、嚢胞が再発することが多いため、根本的な治療にはなりません。
バルトリン腺開窓術による治療
バルトリン腺開口術は、嚢胞の一部を切開して窓を作り、中の分泌物が常に流れるようにして、嚢胞の中に分泌物がたまらないようにする治療法です。嚢胞が2~3cmより小さい場合は行いません。
開窓とは、嚢胞の一部を縦または楕円形に切開し、できた穴を皮膚に縫い付けて外側に開く窓を作り、嚢胞の中に分泌物が溜まるのを防ぐ方法です。
この手術には局所麻酔または全身麻酔(静脈麻酔で眠らせる)が必要ですが、手術自体は20分程度で終わり、基本的に入院することなく帰宅することが可能です。
手術後、しばらくは縫合した部分が腫れて痛みが残りますが、数日で腫れは治まり、傷口の痛みも鎮痛剤で抑えることが可能です。窓を開ける(袋を作る手術)ことで、女性機能に影響が出る心配はありません。
カテーテル挿入によるバルトリン腺嚢胞の治療
カテーテル治療は、嚢胞の一部を小さく切開し、嚢胞の中にカテーテルを入れて開口部を作る方法です。
カテーテルは、先端に風船が付いた柔軟なチューブです。カテーテルを嚢胞の中に入れ、バルーンを膨らませ、約1ヶ月間そのままにして開口部を作り、その後、カテーテルを抜きます。
他の手術と同様、局所麻酔で行われる短時間の手術です。カテーテルを留置している間も性交は可能ですが、多少の違和感がある場合があります。
バルトリン腺嚢胞摘出術による治療
他の治療を行っても再発や感染を繰り返す場合、根本的な治療としてバルトリン腺嚢胞の摘出手術が行われます。
他の治療法に比べて身体的負担が大きく、2~3日の入院が必要です。術後もしばらくは腫れや痛みが残ります。
術後は生理用品やナプキンを当て、こまめに交換し、患部を清潔に保ってください。
施術後は通常の生活を送ることができますが、傷口を保護するために、施術後数日間はできるだけ安静に過ごすようにしてください。性交渉は医師の許可があれば可能です。
バルトリン嚢腫の治療を受けた人は、できるだけ体を温めるようにし、傷が治ったら温座浴を習慣にすると、回復を促し再発を防ぐことができます。
バルトリン腺嚢胞と間違われやすい病気とは?
バルトリン腺嚢胞は良性の病気で、自然に治ることも多いのですが、バルトリン腺嚢胞に似た他の病気は、病院での治療が必要です。
「バルトリン腺嚢胞だから病院に行く必要はない」と思い込んで、治療が遅れてしまわないように気をつけましょう。バルトリン腺の病気には、次のような種類があります。
①バルトリン腺炎
バルトリン腺炎は、バルトリン腺の開口部から細菌が侵入し、バルトリン腺に炎症が起こる病気です。バルトリン腺炎には、急性のものと慢性のものがあります。
急性バルトリン腺炎の症状
- 片側の外陰部周辺の赤みと腫れ
- 外陰部のかゆみ、痛み、熱感
- 動くと痛みが強くなる
慢性バルトリン腺炎の症状
- 外陰部の片側に軽い痛みや違和感がある
バルトリン腺炎の原因とは?
バルトリン腺は、大腸菌やブドウ球菌などの常在菌に侵されたり、性行為の相手からクラミジアなどの細菌に感染することがあります。急性バルトリン腺炎から慢性バルトリン腺炎に移行することが多いです。
バルトリン腺炎の治療方法とは?
原因となっている細菌を特定するための検査を行い、細菌を駆除するための抗生物質を服用します。
②バルトリン腺膿瘍
細菌感染によるバルトリン腺の炎症が悪化し、バルトリン腺に膿がたまる病気です。
バルトリン腺膿瘍の症状
- 発熱を伴う大きく腫れたしこり
- 圧痛
- 動くと痛い
- つぶすと黄緑色の膿が出る
- 発熱することもある
バルトリン腺膿瘍の原因
バルトリン嚢胞やバルトリン腺炎からの移行で発症することが多い。開口部がふさがり、膿がたまることによって起こります。
バルトリン腺膿瘍の原因
バルトリン嚢胞やバルトリン腺炎からの移行で発症することが多い。開口部がふさがり、膿がたまることによって起こります。
③外陰がん
外陰部にできる悪性腫瘍を外陰がんといいます。50~60代の女性に多く見られる病気です。
外陰がんの症状
- 外陰部の表面に痛みのないデコボコした腫瘤ができる
- 患部に治りにくい潰瘍ができる
- 排尿時の痛み、灼熱感
- かゆみ
バルトリン腺嚢胞のしこりは表面がなめらかですが、がんのしこりは徐々に痛んでデコボコしてくるので、観察で見分けられるとよいでしょう。
外陰がんの原因
原因としては、加齢とともに発症しやすくなる外陰部の皮膚病である硬化性萎縮性苔癬や、ヒトパピローマウイルスの感染などが挙げられます。また、子宮や膣のがんからの転移が原因となることもあります。
外陰がんの治療方法
リンパ節に転移した場合、5年生存率は50%以下に低下します。早い時期から症状を自覚しやすい病気です。違和感を感じたらすぐに受診することが大切です。
治療は病期によって異なり、がんと周辺組織の切除、リンパ節の切除が基本です。進行した外陰がんは切除が困難なため、化学療法や放射線療法でがん細胞を死滅させることが行われます。
心配しないで1日も早く受診を!
あまり知られていない病気ですが、バルトリン腺嚢胞の特徴や治療法について解説しました。
デリケートゾーンは他人には相談しにくい部分なので、「ガンなどの悪い病気ではないか?」「痛い治療は不安なので病院に怖くて行けない・・・」という方も多いかもしれませんが、放置し続けてよい結果にはつながりません。
適切な治療で嚢胞を治せた女性の多くは、「しこりができたときは怖かったけど、意外とあっさり治ってよかった」と安堵しています。大切な体ですから、トラブルは早く治して、自分の健康は自分で守りましょう。