「性病って潜伏期間でも感染するの?」
もしかして性病の潜伏期間中に性行為を行い、相手を感染させた(もしくは自分が感染した)かも・・・とお調べですね?
ここでは潜伏期間と自覚せず、相手を感染させたかも(または自分が感染してしまったかも)と不安な方にむけ、性病の潜伏期間と潜伏期間中の感染について解説します。
結論からいうと、他の病気と同様に性感染症の場合も潜伏期間中に感染します(させてしまいます)。通常の性行為のほか、キスやオーラル行為(フェラチオやクンニリングス)等により「のど」や「肛門」などに感染する可能性もあるのでご注意ください。
自分、またはパートナーが性病の潜伏期間にもかかわらず、性行為(オーラルセックスを含む)を行ってしまった場合、郵送タイプの簡易検査キットでも構いません。なるべく早めに検査を受けておきましょう。
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性病の種類によって潜伏期間は違う! 潜伏期間の比較
病原体に感染してから最初の症状が出るまでの期間を「潜伏期間」といい、潜伏期間は性病の種類によって異なります。(この点では性感染症も他の病気と変わりません)以下、各性病の潜伏期間をまとめてみました。
性病(性感染症) | 潜伏期間 |
---|---|
クラミジア | 3日~2週間 |
淋病(淋菌感染症) | 2日~1週間 |
梅毒 | 3週間~3か月 |
トリコモナス膣炎 | 3日~2週間 |
尖圭コンジローマ | 3週間~3ヶ月 |
性器ヘルペス | 3日~7日間 |
B型肝炎 | 1か月~2か月 |
HIVウイルス | 1~10年(やや短いケースもあり) |
潜伏期間の短い淋菌感染症
潜伏期間の短い代表的な性病に淋病があります。
淋菌という菌が引き起こす病気です。男性では尿道炎(尿の出始めの痛み、陰茎の尿道口からの黄色で粘い膿)、女性では子宮頸管炎(帯下増、約半数で無症状)が起こります。潜伏期間(感染機会から症状が出るまで)は2~7日ですが、女性では、自覚症状がないまま、骨盤腹膜炎で発症し、強い下腹部痛をきたすことがあります。更に上腹部まで感染が進展すると肝臓周囲炎を起こし、激烈な上腹部痛をきたします。治療には抗菌薬が用いられ、単回投与(注射)で尿道炎や子宮頸管炎は治る場合が多いのですが、腹膜炎になると入院治療が必要となる場合があります。
引用 厚生労働省『オーラルセックス(口腔性交)による性感染症に関するQ&A』
淋病は主に性交渉によって粘膜に感染する病気で、潜伏期間は2~7日程度です。
感染部位は性別によって異なり、男性は尿道や肛門(※女性でも肛門に感染することがある)、女性は膣に感染する。感染すると、男性は尿道炎、女性は子宮頸管炎などの症状が出るのが特徴です。
他の性病と比較して潜伏期間が短く、原因となる性行為後、比較的早く症状が現れるのが特徴です。
長いと2週間は潜伏しているクラミジア
一方、淋菌感染症にくらべ比較的潜伏期間が長い性病にクラミジアがあります。
性器クラミジア感染症(せいきクラミジアかんせんしょう)は、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)の一種により生じる性感染症 (STD)。性器では男性では尿道に膿みや痛みを生じ、女性ではおりものが増えるが無症状のこともあり、咽喉への感染では、喉が痛くなり痰が増えたりするが無症状の場合もある。
引用:ウィキペディア クラミジア感染症
性行為で感染する性病で、男性の場合は尿道や肛門(※女性でも肛門に感染することがあります)、女性の場合は膣、場合によっては男女ともに喉に感染することがあります。クラミジアの潜伏期間は一般的に約1〜3週間です。
潜伏期間は性病の種類によって異なりますが、この期間に性行為を行うことで感染する可能性は十分にあります。
潜伏期間の長さが異なる理由は、性病の原因菌の増殖がそれぞれ異なるからです。そのため、症状が見えないだけで、他人にうつしてしまう危険性が十分にあるのです。
またクラミジアは以下の記事のとおり、感染者の免疫力によっては、症状が出にくいケースや、全く症状が出ないケースもあります。
【性病検査はいつから受けられるの?】検査可能なタイミングを知っておこう
「潜伏期間中に性病検査を受けてしまうと、正確な結果が出ないのでは?」
原因となる性行為の後、感染を確認するための性病検査が可能になるまでに一定の期間があります。その期間が過ぎたタイミングで検査が可能になります。
性病は、原因となる生物によって潜伏期間が異なります。同様に検査が可能になる時期も、その種類によって異なりますが一部の性病では、性行為後24時間以内でも検査で感染を確認することができます。
先ほど潜伏期間の短い・長いの例として挙げた淋病やクラミジアは、いずれも検査可能な時間が早く、性行為後すぐに検査しても精度の高い結果が得られます。
性病によって検査方法もさまざま
同じ性病でも、菌の種類や症状、潜伏期間などが異なります。そのため、検査方法も大きく異なることがあります。
例えば、B型肝炎、C型肝炎、HIV、梅毒などのあうぃ病は、採血による検査が行われます。
感染検査は、感染後に体内で作られる抗体を調べることで行われますが、性病の種類によって検査項目が異なるので注意が必要です。
検査 | 治療 | |
---|---|---|
性器クラミジア |
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淋菌感染症 |
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尖圭コンジローマ |
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性器ヘルペス |
|
|
また感染の原因となった性行為から一定の時間が経過しないと正確な検査結果が得られない可能性があるので検査時期にもご注意ください。
性病ごとの潜伏期間と検査可能な時期
性病の種類別の潜伏期間と検査可能期間について、報告数の多いものをピックアップして詳しく説明します。潜伏期間の短いものから順に紹介していますので、参考にしてください。
検査可能な時期 | |
---|---|
クラミジア 淋菌感染症 トリコモナス膣炎 |
感染から24時間以降 |
性器ヘルペス | 症状がみられてから |
尖圭コンジローマ | 症状がみられてから |
梅毒 | 1ヶ月~ |
B型肝炎 | 2ヶ月~ |
カンジダ膣炎(膣カンジダ症) | 症状がみられてから |
HIVウイルス | 3ヶ月~ |
淋菌感染症
数ある性病の中で、最も潜伏期間が短いのが淋病です。
前述したように、潜伏期間は2~7日、検査可能期間は感染機会から24時間です。
男性が感染した場合、排尿時の痛みや尿道口からの膿などの症状が現れます。女性は、おりものの増加や不正出血が見られることがありますが、無症状であることが多いようです。
性器ヘルペス
性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス1型または2型に感染することで起こる性感染症です。
単純ヘルペスウイルスは口唇や口腔内に水疱・潰瘍をきたし、この感染症は痛みを伴い、治っても再発を繰り返します。症状がない時でもウイルスの排泄は続いているといわれ、オーラルセックスでこのウイルスが性器に感染し、2~5日の潜伏期を経て性器ヘルペスとして男性では亀頭や包皮に、女性では陰唇を中心に水疱・潰瘍・痛みをもたらします。治療には抗ウイルス薬の投与が行われます。
引用 厚生労働省『オーラルセックス(口腔性交)による性感染症に関するQ&A』
感染すると、男女ともに性器に潰瘍性または水疱性の病変が生じます。潜伏期間は3日~1週間で、症状が出たときが検査可能期間となります。
クラミジア
ここからは、潜伏期間が1週間以上とされる性病です。前述の通り、クラミジアの潜伏期間は1~3週間です。
しかし検査可能期間は感染機会から24時間なので、疑わしい場合は早めに受診するようにしましょう。
感染すると、男性は尿道の不快感やかゆみなどを感じることがあります。
女性はほとんど症状がないことが多いですが、おりものの量が増えたり、特有のにおいがすることがあります。
トリコモナス症
クラミジアと同様に、トリコモナス症は1週間から3週間の潜伏期間があります。トリコモナス症は、トリコモナス原虫という寄生虫によって感染する性病です。
肉眼では見ることのできないトリコモナス原虫が、性器内に入り込んで炎症を起こす性感染症です。男女で寄生する場所が異なり、男性の場合は前立腺や精巣、尿道や膀胱です。女性の場合は膣内や子宮頸管、尿道や膀胱に寄生します。
引用 あおぞらクリニック
クラミジアと少し違うのは、感染機会から24時間以降に検査すると満足のいく結果が得られるという点です。
男女ともに自覚症状がないことが多い性病です。男性は尿道のかゆみや排尿痛、女性はおりものの増加や特有のにおいなどを感じることがあります。
マイコプラスマ・ウレアプラズマ
クラミジアと同様に、マイコプラズマ・ウレアプラズマは1~3週間の潜伏期間があります。日本では2012年から検査が可能になったため、日本での認知度は比較的低いかもしれません。
この検査では、感染後24時間経過して初めて精度の高い結果が得られます。
男性の場合、尿道炎、排尿時の不快感、おりものなどの症状が見られます。一方、女性は症状がないことが多いのですが、おりものの増加や性交時の特有の痛みを感じることがあります。
また性行為だけでなく、キスだけでも感染することがあるので注意が必要です。
梅毒
梅毒は、潜伏期間が3週間から3ヶ月の性病です。
口唇・口腔内にも梅毒病変ができることがあり、梅毒トレポネーマという菌がオーラルセックスによって、性器に病変を作ります。性行為後約3週間の潜伏期を経て男性では陰茎亀頭部やその上の包皮、女性では陰唇部に初期硬結という痛みのない硬い病変ができ、次第に崩れ、硬性下疳と呼ばれるやはり無痛の潰瘍となります。この病変は自然に吸収され良くなりますが、病気が治ったわけではなく、そのあと全身感染となり、約3か月後にはⅡ期病変と呼ばれる手のひら・足の裏を中心に乾いた発疹が現れ、進んでいきます。治療には抗菌薬が使われます。
引用 厚生労働省『オーラルセックス(口腔性交)による性感染症に関するQ&A』
検査で満足のいく結果を得るためには、感染の機会から1ヶ月以上待つ必要があります。
感染すると、男女ともにしこりや赤茶色のバラ疹が見られますが、痛みはありません。
昔は不治の病として大変恐れられていました。現在では治療法が確立され、早期治療により完治が可能です。しかし放置すると大動脈炎、大静脈、ゴム腫形成、鞍鼻を発症することがあります。
この記事のように、梅毒は感染力が強いので、十分な警戒が必要です。
尖圭コンジローマ
尖圭コンジローマは性感染症で、潜伏期間は3週間から8ヶ月です。
感染しても症状が出ないことが多く、基本的には視診で感染が確認されます。感染すると、男女ともに外陰部や肛門の周囲にイボができるのが特徴です。
治療は、電気メスや炭酸ガスレーザーを用いた手術のほか、塗り薬や液体窒素を使用することもあります。基本的に症状がみられた段階で、診察~検査するのが一般的です。
B型肝炎
B型肝炎は、1~6ヶ月の潜伏期間を持つ性感染症です。検査で十分な結果が得られるのは、感染の機会から2ヶ月後です。
B型肝炎の代表的な症状は、男女ともに、だるさ、吐き気、頭痛などです。B型肝炎ウイルスによる性感染症で、C型肝炎と同様、血液や体液を介して感染します。
またキスなどの性的接触で感染することも共通しています。慢性肝炎の場合、体内からウイルスを完全に排除することは現実的ではありません。
肝硬変やがんを予防しながら、長生きするための治療法が選ばれています。
HIV
恐ろしい性感染症の一つとして、エイズは多くの人に認識されています。その潜伏期間は3ヶ月から数年です。
検査の場合、感染機会から2週間後、当日検査の場合は6週間後から陽性反応が出ます。完全に感染していないことを確認したい場合は、3ヵ月後に検査を受けるとよいでしょう。
感染すると、男女ともに徐々に免疫力が低下していきます。免疫力が低下すると、健康な人には感染しないようなウイルスや細菌に感染する危険性があります。
原因となるウイルスを完全に排除することはできませんが、医学の進歩により様々な治療法が確立され、以前ほど脅威を感じる病気ではなくなりました。
カンジダ症
カビの一種であるカンジダ属の菌が原因で起こる性感染症で、主に女性に多く潜伏期間は数年に及ぶこともあります。
女性が感染すると、おりものが白くなったり、かゆみが生じたり、性交痛が生じたりします。
検査は症状がみられたタイミングならばいつでも可能です。
まとめ
性病の種類によって潜伏期間・検査可能な時期はさまざまですが、共通しているのは、症状がでていない状態だとしても性行為によって他の人に感染させる危険性があることです。
また症状の重さにかかわらず、パートナーを感染から守るためにも十分な注意が必要です。性病の疑いがある場合は、クリニック受診に抵抗がある方は、自宅でこっそり試せる郵送タイプの簡易検査キットでも構いません。思い立ったら早めの検査をお勧めします。